ガッ
ガガッ
時と時空の思い15.2
目の前では盛大な音を発てて犬夜叉と殺生丸様が打ち合
っている。
目で追うのがやっとで、目で2人を追っていると、目が
クルクルして来そうだ。
「殺生丸さま、あなたさまには……」
ゴクリ
生唾を飲み込む。
「鉄砕牙は抜けなかった。そうですな!?」
「……」
ああぁ
止めて欲しい。
なんで殺生丸様を煽る様な事するのさっ!
沈黙が痛すぎる。
「犬夜叉になら抜ける……と申すのか?」
ああぁぁぁぁぁ
声が痛いよぉ!!
完璧に怒っている声だ。
こちらに向けられた怒りではないからマシだけれど……
これを自分に向けられたら絶対泣く自信がある。
「当然じゃ、父君が犬夜叉さまに墓を託されたのがなに
よりの証拠」
煽る、煽る、煽りまくりだ。
「さ、犬夜叉さま早く」
「けっ、俺はこんなオンボロ刀に興味はねえ!!殺生丸!
てめぇよくも……さんざんおれをコケにしてくれたな!」
再び犬夜叉が飛び出し、再び2人が打ち合い始める。
地面が削れ、物凄い音が響き、地面の上に散乱した何か
の骨が砕かれ、こっちまで飛んで来た。
それに、飛び掛る犬夜叉を軽く避けている殺生丸様は、
かなり素敵だが……此処でこうしているわけにはいかな
いのだ。
そう考えている間にも、かごめちゃんが犬夜叉を煽り始
めた。
「なるほど……そいつはすげぇ嫌がらせだな」
しかも!!
犬夜叉は何だかやる気満々になっちゃたし!
もう、こうしちゃ居られない!
慌てて骨をよじ登り駆け出した。
かごめちゃんが抜く前に、私も試して見たい。
「ぬおおぉぉぉぉぉぉぉぉ」
「……」
抜けない。
「あれ?」
何だか向こうは犬夜叉も抜けず、シーンと嫌な空気に包
まれている。
が、殺生丸様の呟きにより
再び乱闘が始まり。
後ろの方に居た邪見が、嫌な笑を溢して人頭杖をクルリ
と回した。
グシャ
しかし、その加勢もかごめちゃんの登場により、直ぐに
止めらる。
あぁ、間に合わないかも……。
なんで殺生丸様あんな遠くに連れて行ったの〜!
此処は邪見に少し頑張って引き止めて貰わねば!
「子悪党〜」
「こっ、この小娘ぇ〜」
憎らしげににらみ合う2人。
「今度は負けぬ!」
掛け声とともに、かごめちゃんを弾き飛ばす邪見。
流石に、その行為に声を上げる。
「邪見!女の子に何するのよ!!」
「には関係ないわっ!」
邪見は聞こえたらしく何か叫んでいる。
「聞こえないー」
叫びつつも走り続けるが……
次の瞬間崩れ落ちた。
間に合わなかったーーーーーーーー
かごめちゃんが弾き飛ばされた先には……
鉄砕刀。
それを支えに立とうとしているかごめちゃんを見て、カ
クリと両手を地面に着けて溜め息を吐く。
「消えろ」
はっとして振り返った。
殺生丸様の冷えた声。
視線の先には犬夜叉が地面に伏し、今にも止めを刺され
そうになっていた。
「犬夜叉……」
スコ
あ〜
ぬけちゃった。
「げ」
「な゛っ……」
その場にきの抜けたそれぞれの声が、こぼれ出た。
