時と時空の思い12.2
「なっ!!!」
気が付いた時には、ムサっ苦しい男の波がこっちに向か
って押し寄せてきていた。
「うおぉぉぉぉ」
そんなうなり声を上げて突進してくる。
「ちょっとマジデ?」
はっきり言う、知らないかもしれないけど私は命の恩人
である。
あのままセリフの後に続いていたのは、邪見への命令。
この場のあのムッサイのを邪見にまかせると言う。
それを聞いた邪見の行動は・・・・・・。
想像したくも無い。
この場には灰すら残さず・・・・・・。
そんなことを考えている間にも、一人の男が私に向かっ
て刃を構え捕らえようと目前まで迫ってきていた。
「・・・・っ!!!」
ギュッと目を瞑り数歩後ず去る。
その瞬間。
私の脇を一陣の風が物凄い勢いで吹いていくのを感じた。
数秒後。
痛みも感じないことに首を傾げながらそっと目を開く。
と・・・・・・。
「なっ・・・」
目の前には銀色に輝く物がサワサワと揺れている。
そしてその先に目を向けると、先ほどまで私に刃を向け
ていた男が仰向けに倒れていた。
「うっぅぅぅ」
唸りを上げている所を見れば生きてはいる様だ。
「・・・邪見」
殺生丸様の声が静かに響く。
「はいはい、今片付けて」
ヒョコヒョコと人頭杖を持った邪見が前へと進み出た。
ああ、見たくない。
ギュッと殺生丸様の背中のモコモコの毛皮にしがみ付く。
「・・・行くぞ」
「へっ?」
なっ・・・。
驚いて固まる私達を気にすることも無く。
殺生丸様はスタスタと歩き出した。
もちろん後には私を引っ付けたままだから、私もスタス
タとあるく事になる。
後では邪見が慌てたように動き出した。
「殺生丸様!!いいのですか?お待ち下さい!!」
そんな邪見の後にいた武将達も固まって動かなくなって
いる。
私の目を瞑っていた数秒間に、殺生丸様はいったい何を
したんだろうか。
怯えた目で殺生丸様を見ていた。
その後暫く歩くと、木で出来た小船が浮かぶ川原へと
たどり着いた。
それに全員が乗り込むのを確認すると、邪見が人頭杖を
使って船をユラユラと進め始めた。
「、あまり川を覗き込むな」
後を振り返って川を見ていると、前に座っていた殺生丸
様が呆れたように呟く。
呆れたように、は想像で声も顔も無表情その物だけど。
慌てて真ん中に座りなおす私を確認すると、殺生丸様
は何事も無かったように無言にで前を向き直る。
その背中に向かって邪見が口を開いた。
しかも、ちゃんと私の先程の失態を鼻で笑ってからだ。
「殺生丸様」
「何だ?」
「お墓のありか。犬夜叉なら知っているのでは?」
「犬夜叉・・・」
遠くを見るように視線を向ける殺生丸様には思わず
見ほれてしまう。
バキッっと言う音をたてて邪見が川の中に落とされる
まではだけど。
かなり驚いた。
まあそのお姿すらお美しいけど、それ所では無い。
殺生丸様は人頭杖を使ってジャボジャボと邪見を沈め、
無表情に怒っているようだった。
「胸くそ悪い半妖の事など思い出させるな」
「あ゛ううっ、お許しを」
少し、いやかなり邪見が可愛そうだ。
ブクブクと手足をばたつかせて謝っている。
「第一、やつは生きてはおらん。封印されたと聞いてい
るぞ」
「で、ですからその封印が、解かれたと・・・」
「何?」
よしっ!この隙に引き上げよう。
そっと縁に近づいて邪見の手を思いっきり引っ張り、
船の上へとへたり込む。
そおっと殺生丸様を見上げ、目を合わせる。
その瞳を見れば怒っていないようで、やっとホッとでき
たのだった。