時と時空の思い16.2
色んな物につまづきながら、進んでいく。
とにかく遠い、なんでこんなに遠いのだ!
ああっ
殺生丸様がかごめちゃんに向かって攻撃を繰り出した。
知っていてた、否、知っている。
けれど、ドキっとした。
かごめちゃんは鉄牙の結界で無事だ。
わかっていても、足が微かに震えだす。
犬夜叉が怒っている。
殺生丸様は何か呟いたみたいだけど、ここまで聞こえない。
ふっと目の前が真っ暗になった気がした。
次に目を開けると、
「おれがお前を守るっつってんだ」
犬夜叉の大声が耳に飛び込んできた。
一瞬目の前が暗くなっただけなのに、どうやら気絶していたみたい
で、ジャリジャリの上に転がっている。
しかも、嫌そうな顔をした邪見が私を見下ろしている。
一番最初に目に入ったのが邪見って……。
「殺生丸様が大層心配され、お前を見とけと言われたのだ」
なるほど。
気絶した私を邪見に見守らせたらしい。
「私……迷惑かけてる」
なんともなしに呟いたら。
邪見が物凄い剣幕で突っかかってきた。
「当たり前じゃ! お主でなかったらとっくに見捨てとるわい」
「邪見……」
いい奴。
落ち込んだ私に、一応気を使ってくれてる。
和やかに話す私と邪見。
だけど、ふと前を見据えれば、殺生丸様と犬夜叉が対峙していて……。
殺生丸様は妖怪の姿になっている。
「殺生丸様〜」
邪見が大声で殺生丸様の応援をし始めた。
でも、殺生丸様には聞こえてるのかな?
そんな事を考えていたら……。
ドゴン
……。
「……へっ?」
私の横を何かが通って、邪見へと直撃した。
「負けないわよ!」
かごめちゃん!
ヒドイ、私もそばに居たのに、巻き添えにあったらどうするの!?
「……ぅぅ」
隣では邪見が唸ってる。
でも、そんな事は今はどうでも良い。
殺生丸様!
急いで戦いの場へ目をやった。
ちょうど犬夜叉が殺生丸様に切りかかっていく。
物凄い音が響きわたる。
「……っ嫌ーーーーー!」
嫌だ!
叫び声しかでなかった。
切り付けられ、倒れこむ殺生丸様。
左腕がボロボロになって落ちていく。
走り出そうとしたのを、邪見が押さえつけてなかったら、きっと
走っていってた。
「殺生丸様!!」
嫌だ。
怖いよ……死なないって……逃げるんだって……強いって知ってる。
だけど怖くて仕方なかった。
「イヤダ……いや!」
犬夜叉が渾身の力込めて刀を振り切る。
「……っ」
「せっ殺生丸様っ……」
どうしよう、どうしよう、どうしよう。
あんな大怪我……。
わかってたのに、止められない。
「せっ殺生丸様っ、お待ちくださーい!」
邪見が駆け出す。
「おい、何をしておる、早くしろ!」
無理やり手を引かれ、ぴょんと飛び上がる。
「ちゃん!」
かごめちゃんの声が聞こえて、慌てて振り返った。
犬夜叉と並んでこっちを見てる。
「脅されてるの?」
心配げに顔を歪めてる。
やっぱり心配掛けてたんだよね。
「違うの!好きだから!」
「だからね、大丈夫! 殺生丸様も本当は優しい人なの!」
満面の笑みを浮かべると、今度こそ振り返らずに、邪見に引っ張られ
駆け出した。
