時と時空の思い11.






「・・・・・・」



此処って何処ですか?

殺生丸様に抱き上げられ、風圧やその他もろもろの出来
事(おもに殺生丸様の色気)に気を失っている間に、
私は1人ぼっちになっいました・・・。


何処かの洞穴らしい其処は、焚き火と私以外には何も無
く、偶にポチャン、とかピチャなんて水音のみの空間だ
った。



「マジデ?」

結構深いらしいこの洞窟は、遠くに光が入ってくる穴
が見え、其処が入り口だと思う。
私の後ろにはまだまだ道が続いている。



「・・・・・・マジデ?」



もう一度同じ言葉を口にしてみるけれど、状況はひとつ
も変わりはしない・・・・・・。


どうしよう、気絶したからこんな軟弱な奴は置いてい
く!!

みたいな状況だったら・・・・・・。




もう一度寝てみるか?

現実逃避ぎみななのは分かってるけれど、此処から動く
のは正直得策には思えない。
もしかしたら少し出かけただけで、殺生丸様だって近く
にいるかもしれないし・・・・・・。


寝よう・・・・・・。

自分に掛けられていたタオルの様な物を、もう一度かけ
直すとクルリと丸まって目を瞑る。



・・・・・・。









「・・・っ!!」



突然の声にタオルを蹴り上げ、飛び起きる。



「殺生丸様!」



足に纏わり付くタオルを避け、慌てて駆け寄る。



「・・・・・・急に何だ?」



「置いていかれたかと思って・・・・・・」

「ふん! 置いていく奴のために焚き火など焚くか!」


邪見も居たらしくうしろから不貞腐れたように出てきた。
何故か邪見は全身びしょぬれで、クシャミまでしている。


「えっと・・・ごめん。 驚いちゃって」


「まったく、誰のためにこんなめに遭ったと思っ
て・・・・・・ブツブツ」

「・・・・・・こんな所だ魚ぐらいしか無かったが食べるか?」




「えっ? もちろん!!」


今の言葉で邪見の態度の原因が分かった。
きっと、魚をとらされたのは邪見なのかも・・・・・・。




「取ったのは私だ」


「・・・・・・えっ?」


「・・・・・・」


「聞こえてた?」



「口に出てたぞ馬鹿者め」

邪見に思いっきり突っ込まれる。

呆れた顔で睨んで来るけど、取ったのが殺生丸様なら
邪見の不機嫌の理由がよく分からない。

理不尽だ!!!


「うぅ、じゃあ何で邪見は不機嫌なのさ」


「外は雨だからと、此処に置いてお前の食べ物を取りに
行って来たのが分からんのか!?」

余計プリプリとしてしまった。

雨に濡れたから不機嫌だったのか・・・・・・。


でも全然雨に気づかなかったな・・・・・・。
と言うか此処外見えません。
着く前気絶してました。



・・・・・・ダメダメだな自分。




「邪見・・・・・・」


今まで黙ってみていた殺生丸様の一言で黙りこんだ邪見
は「まったく殺生丸様は様には甘くて困る」
何て言いながら隅の方へと去ってしまう。


ごめん邪見。


心なしか後姿に哀愁が・・・。






いつの間にか焚き火で焼かれている魚は美味しそうに
焦げ目が付き始めている。


「食べないのか?」


焚き火の前に座る殺生丸様!鼻血が!!!
何してても様になって、血が足りなくなりそうだよ私。


「食べる!」


邪見の視線を感じつつも、ちゃっかり殺生丸様の隣に
腰掛けると、幸せに浸る私は正しいはずだ!!!


なので邪見の視線は取り合えず無視の方向で・・・・・・。



って!


無理。

何この熱視線。

殺生丸様が取られて悔しいからってそんなに見つめられ
ると困るんですけど?